交通事故の行政処分について
先月交通事故に遭いました。
信号のない交差点で車同士の接触事故です。
優先道路は私側です。
相手は還暦を過ぎた女性で、シートベルトをしていなかったため死亡しました。
保険会社による過失割合は1:9でせんぽうが重過失となっておりました。
事故時のスピードは双方30キロほどです。
先日、行政処分の通知が届きましたが減点15点となっており、納得がいきません。
貰い事故のようなもので、これで15点も減点されてしまうのでしょうか?この処分は覆すことはできないのでしょうか?
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- 川端敏弘司法書士・行政書士事務所
川端 敏弘
行政処分を覆せることができるか否かは,相談内容だけの状況では判断できません。しかし,可能性がないわけではないと思いますので,弁護士に直接会って相談されることをお勧めします。
1 行政処分の通知書中に,意見を述べる機会が与えられている旨の記載がありませんか。
その機会が与えられていれば,その機会にご自身の意見を述べれば良いと思います。
また,既に,行政処分を受けた場合には,その処分に対して,行政不服審査法に基づく不服申立てができるのではないかと思います。
ただ,上記意見申述または不服申立てをした場合,行政処分が覆るか否かは,相談内容の記載だけでは,事故現場の状況などがはっきりとしないので,にわかに判断することはできません。
2 そこで,確認したいことがあります。
① 減点15点の内訳は,どうなっているかということです。
相談内容にある「減点の点数」については,「一般違反行為に対する基礎点数」(道路交通法施行令《以下「施行令」という。》の別表二の一)に「違反行為に対する付加点数(交通事故の場合)」(施行令の別表二の三)を加えたものだと考えられます。【別表二の備考一の2の(イ)】
そして,本件死亡事故については,専ら相談者の不注意によって発生したとは認められないようですから,その点数は,「13点」ということになると思います。
すると,残り「2点」の基礎点数の違反が何かということが問題になります。
② 相談内容では,事故現場の交差点は,信号がなく,相談者が進行していた道路が優先道路だということですが,それは,道路交通法(以下「道交法」という。)36条2項に規定されている優先道路ですか。また,左右の見とおしがきく交差点ですか。
前記優先道路でなく,かつ,左右の見とおしがきかない交差点であれば,仮に被害者側に一時停止の標識が設置されていても,相談者には徐行義務があるので,「徐行場所違反」(道交法42条)となり,この場合には,処分が覆る可能性はほとんどないと思います。
次に,事故現場交差点の状況あるいは事故の状況から,「交差点安全通行義務違反」(道交法36条4項)と認定されていることが考えられますが,この違反を否認するためには,事故現場及び事故の状況を検討する必要があると思います。
また,「安全運転義務違反」(道交法70条)と認定されている場合には,行政処分の決定が覆される余地はあると思います。「安全運転義務違反」は,具体的な道交法違反に該当しない場合,事故が起きた以上,何らかの過失があるのではないかということで,安易に適用される場合があると思います。ですから,「安全運転義務違反」を厳格に解釈した場合,本件事故において適用できるか否かは微妙であるように思います。これも,事故現場や事故の状況がはっきりしないので,何とも言えません。
なお,保険会社が1対9という過失割合を出していることから,相談者にも何らかの落ち度があったことになっていると思うのですが,それが基礎点数となる道交法違反であるか否かは分かりません。
③ 施行令の別表二の備考一の2の本文により,「当該違反行為をし,よって交通事故を起こした場合」に付加点数が加えられることになると解釈できます。
したがって,基礎点数となる違反行為が認定できるか否かによって,行政処分の有無が決せられることになると思います。すなわち,例えば,「安全運転違反」が認定されなければ,行政処分を受けることはないということです。
④ 行政処分前に意見を述べるか,あるいは,行政処分を受けた後に不服申立てをするかどうかは,弁護士など専門家と直接会って相談した方が良いと思います。 以上
- 川端敏弘司法書士・行政書士事務所
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- 司法書士行政書士 児玉事務所
児玉 卓郎
回答
保険会社の裁定と行政処分は別個であり、行政処分は保険会社の裁定に左右されるものではありません。納得いかなければ行政処分の不服申し立てや裁判もできますが大変厳しいと思います。
- 司法書士行政書士 児玉事務所